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第45回地球の子ども通信国際交流事業 事業終了報告書

ニューヨーク州立大学生と日本の子ども達との文化交流プログラム

※見出しをクリックすると開きます

成果

ニューヨーク州立大学ブロックポート校学生との2度目のCCE交流事業は、“日本の芸術と文化プログラム”を目的に行われた。来日した一行は、京都、広島、東京で日本の歴史、文化体験を経て、仙台でのホームステイプログラムと南三陸町被災地訪問を計画実施した。

CCEとブロックポート校学生との文化交流会は、日本の伝統文化を中心に琴、尺八、折紙ワークショップを行った。学生達は大変興味深く参加していた。日本の子ども達と一緒に踊った“よさこいソーラン”は、言語の違いを越えて心が通じ合った時間となった。又、引率者であるケビン教授は、みんなで楽しめる創作ダンスワークショップを提案し行った。会場は大変盛り上がった。

南三陸町被災地体験では、津波が起こる以前の町の風景や人々の暮らしが理解しにくいため、アメリカの学生達は被災の大きさを実感することは難しかったようだ。が、資料館でアメリカから受けた支援物資を見たり、2009年と2011年の航空写真を比較することで、当時の被災の様子を学んだ。

マスメディアを通したイメージでアメリカを見ていることが多い私達は、アメリカの文化、暮らしについて知らないことに気づかされた。アメリカの学生達もまた、日本についての知識が薄いことに驚かされた。このプログラムの中で唯一の仙台ホームステイ体験は、アメリカの学生達にとって日常の生活文化を通し、人と向き合いながら日本を学んだ貴重なものとなった。

英語圏の国との交流事業ということで、英語にこだわりを持っていたホストファミリーとは対象的にCCEの中、高校生達は、“どこの国の人も人として同じ”という視点で、州立大学学生との交流を楽しんでいた。これまでの国際交流事業を通し、アジアの国々との交流体験によって培われた力と言える。

一行の中に、国連で働いている75才の女性が参加していた。彼女はCCEのボランティア活動を高く評価し、アジアだけでなくアメリカとの交流も計ったらどうかと提案していた。

今回の芸術文化交流事業は、国、言語を越えて、遠い国の人々と異文化相互理解の機会を図る大きな役割を果たした。事業に関わった子ども達、ホストファミリー、そしてアメリカの学生達の双方に継続的な交流が図れることが期待できる。

地球の子ども通信(CCE)
会 長 芳 賀 節 子

実施要項

平成26年は、2月末にラオスの小・中学生、7月には昨年に引き続きアメリカニューヨーク州立大学学生との国際交
流招へい事業を予定しています。

1.主旨

地球の子ども通信は、この地球上にたくさんの友達を作り枠取りのない子ども達の目線で捉えた国際交流を深め、より良い子ども達の環境を作ることを目的とし1992年に発足。
1993年より主に小学生、中学生を対象としアジアの国々との招へい、派遣ホームスティ国際交流事業を継続的に行ってきた。

又、昨年7月には、アメリカニューヨーク州立大学学生と日本の子ども達との文化交流事業を行った。これらの事業を通して、子ども達は異文化を学び世界観を拡げてきた。

この度、ニューヨーク州立大学ブロックポート校学生との継続交流として「ニューヨーク州立大学学生と日本の子ども達との文化交流プログラム」の文化交流事業を計画するに至った。

このプログラムは、ニューヨーク州立大学ブロックポート校「日本の芸術と文化プログラム」(東京、京都、広島、仙台)のため来仙する学生と引率者を対象として行う。

仙台でのプログラムについては、地球の子ども通信が企画。

ホームステイを通した日本生活文化体験と子ども達との交流、又、被災地南三陸町を訪問し東日本大震災被災状況について体験的に学ぶことを目的として実施する。


2.目的

次代を担う世界中の子ども達に国際親善の輪を拡げ、子どもレベルでの友情交流と文化相互理解を深める。


3.方法

ニューヨーク州立大学ブロックポート校学生を対象とし、宮城県仙台市でのホームステイを通して日本の生活体験をする。又、文化交流会を通し日本の子ども達との交流を図る。


4.内容

①ホームステイ対象
アメリカ ニューヨーク州立大学ブロックポート校学生 7名
引率者 2名

②時期日程
平成26年7月23日(水)~7月28日(月)(6日間)

③日程内容
別紙「仙台ホームステイ日程」参照


5.経費

仙台ホームステイ期間中の滞在費、文化交流会費など、地球の子ども通信(CCE)が負担する。尚、南三陸町訪問費は参加者が負担する。


6.組織

主催: 地球の子ども通信(Children’s Communication on Earth)
後援: 宮城県 仙台市 仙台市教育委員会 (公財)宮城県国際化協会
    NHK仙台放送局 河北新報社 朝日新聞仙台総局 TBC東北放送
補助: (公財)仙台国際交流協会


ウエルカムパーティ歓迎の挨拶

芳賀会長より

皆様こんばんは。
Mr. Kevin Warner、Mrs. Margaret Corbin、学生の皆さん、ようこそ仙台にいらっしゃいました。

今年もまたニューヨーク州立大学ブロックポート校の皆さんとの交流事業を開催できますことを大変うれしく思っています。
この地球上に約70億の人々が暮らしていると言われますが、こうして皆さんと出会い、交流できますことは、奇跡のようなことだと思います。

皆様の仙台での主な目的は、被災地訪問とホームステイプログラムと聞いております。私達は、3.11大震災体験を通して命の尊さを改めて学びました。そして、多くの国々から沢山の支援をけ、国を越えて人と人とが繋がりの中で共に生きていることを、また深く学びました。

人々の生きる場所が異なれば、吹く風も、照りつける太陽の光も違うはずです。私達は人々と出会い、その国の文化を知り、良い友人になっていくことが、平和な世界を作ることにつながると考えています。どうぞ様々に学び、発見し、相互理解の芽を育んでいって下さい。この地球上に暮らす私達の未来のために。

最後になりましたが、昨年に引き続きCCE交流事業のニューヨーク州立大学のコーディネーターをして下さっている橋本有子さんに、心から感謝申し上げます。


CCE芳賀会長にケビン教授より記念品贈呈

ケビン教授より




仙台ホームステイプログラム

ウエルカムパーティと文化交流会

イズミティ21・展示室にて「ウエルカムパーティと文化交流会」を行った。日本の子ども達、ホストファミリー、CCE会員など約80名が参加した。歓迎セレモニーでは芳賀会長の挨拶後、ニューヨーク州立大学ブロックポート校のケビン教授が「昨年に続き今年もまた、ホームステイを引き受けて頂き感謝申し上げます。」と挨拶した。
文化交流会での琴・尺八演奏は素晴らしく、古典的な「六段の調」や夏の季節を感じる「ひぐらし」など、アメリカの学生だけではなく日本人もまた、その音色に感動していた。体験ワークショップでは、琴の弾き方を教えてもらいその音色を楽しんでいた。ケビン先生によるムーブメントワークショップでは、全員で体を動かしダンスを楽しんだ。最後は全員で「よさこいソーラン」を踊り盛り上がった。有意義な文化交流会となった。

 
誇るべき日本の伝統音楽を紹介


熱心に琴を弾いていたアメリカの学生


アメリカの学生による自己紹介と研究テーマの紹介


パーティ参加者全員で踊った「よさこいソーラン」

おりがみワークショップ

創作折紙師オリガミ・タロー氏を講師に迎え、おりがみワークショップを行った。テーマは“サメ”。二枚の折紙を使っての芸術作品作りに、州立大学学生は熱心に取り組んでいた。又、デザインされた紙を使って「奴さん」も作った。州立大学学生だけではなく、日本の子ども達もホストファミリーも、みんなが楽しめた文化体験となった。



オリガミ・タロー氏と折り方を通訳する橋本有子さん


日本の折紙文化をホストファミリーと一緒に楽しんだ


楽しかった「サメ」作り

被災地南三陸町訪問

昨年に続き、被災地南三陸町を訪問。津波の被害に遭った海岸沿いや資料館を見学、津波の被害状況や復興の現状を学んだ。夜は廃校となった小学校を改築した宿泊施設“さんさん館”に泊まる。二日目は、CCEを支援して下さっている阿部さんの畑でジャガイモ掘りを体験。その後、阿部さんのお宅で採れたジャガイモを料理して試食する。35度の猛暑の中収穫したジャガイモの味は格別だったようだ。又、震災後初めてとなった南三陸町夏まつりにも参加することが出来た。被災地の皆さんに温かいおもてなしを受けた二日間となった。


阿部さんの指導でジャガイモ掘り体験


収穫したジャガイモでフライドポテト作り


さんさん館での夕食風景おいしい海の幸に大満足

フェアウェルパーティー


挨拶する芳賀会長


感謝を述べるケビン先生


サックス伴奏で「星に願いを」を合唱
指揮はホストファミリーの3才の男の子


幼児による忍者ダンス「しのびのごくい」


文化や言葉の違いを越えて一緒に踊った「よさこいソーラン」


全員で記念撮影

ホームステイプログラム 感想

ケビン先生



マーガレットさん



学生の皆さん

“My home stay experience has been a wonderful and educational opportunity that will be with me forever. It amazed me how generous and welcoming everyone was; that is something that will take with me back home.”

- Angelica Gomez
State University of New York College at Brockport
Brockport, NY (USA)



“Without the CCE program and the wonderful dedication of all involved in making this program work, my visit to Japan would be missing a huge, essential part of the Japanese culture: the culture of the home. This experience was priceless beyond all description and everything felt perfect. I will miss my host family dearly but I am incredibly glad I was privileged to have this experience.”

- Meagan Gaylord, undergraduate student
State University of New York College at Brockport
Brockport, NY (USA)



“Before CCE, I never did a home stay; I never imagined I would travel to another country and gain a second family. With this program, this is exactly what I did! I’m very thankful to CCE for having this program and giving me the opportunity to meet everyone and really experience Japan with the Sonoda family.”

- Nelly Gomez, undergraduate student
State University of New York at Plattsburgh
Plattsburgh, NY (USA)



“Through this amazing experience, I gained not only new knowledge of the Japanese culture and home life, but I also gained something even more special: A family.”

- Alexis Clark, undergraduate student
State University of New York College at Brockport
Brockport, NY (USA)



“The CCE program provided me with a unique opportunity to interact with and learn about Japanese culture within an individual family. My host family was beyond kind and generous, and made me feel at home. You can read about a nation and its people in books or online, but to actually live with and communicate in an intimate way is truly life changing. It has given me new perspectives and shown me that family is family, no matter where you come from. Without CCE, I would not have had this wonderful opportunity and I’d like to thank them for the experience, as well as for the many friendships that I have developed while staying in Sendai.”

-Elise Cade, undergraduate student
State University of New York College at Brockport
Brockport, NY (USA)



“I fell in love with my family immediately and their generously was obviously heartfelt. They wanted to teach me about the culture and themselves, and I certainly leaned. They showed me the Japan you do not see everywhere else; I was just a part of the family and they introduced me to the best their town has to offer.”
“Thanks to Haga-san and Kobayashi-san personally for ensuring I arrived at a scheduled event by taking their own time and treating me to lunch. Also a huge arrigato for helping everything run so well and so smoothly. This experience will truly stay with me.”

- Elon Clarke, undergraduate student
State University of New York College at Brockport
Brockport, NY (USA)



“I personally had many wonderful experiences with CCE. Highlights included:
・My host family, the Konnos – Four children always helping, working to set up
+ take down equipment, and make everyone comfortable;
・Children participating in song, dance, translations and more;
・Keiko, my host mother, hard at work to make all programs complete, fun, and educational;
・Mrs. Haga, the president, who attended every activity and participated herself;
・Mrs. Haga, who is detail oriented and makes sure nothing is forgotten or overlooked. She recognized that I worked with another international organization and made opportunities for me to talk w/other committee members, and took me to lunch to further our international connections.
Each event -origami, welcome and ending events were led by talented community professionals. Outstanding!”

–Margaret Corbin
United Nations Association of Rochester, NY (USA)



ホストファミリーの皆さん -ホストファミリー報告会よりー

・日本の子ども達は、学校生活のみならず受身の姿勢が多い中、橋本有子さんがこのプログラムを立ち上げ、責任を持って作り上げる力はすごいと感じた。特に、学生を叱っている場面を見て思った。このような積極的な姿勢から、日本人は学ばなければならないと思った。
・何でもいいよではなく、"No"の選択肢がない自分に気づかされた。
・英語圏の人の受け入れは初めてだった。Alexisは英語は国際共通語の認識で話しかけてきたことから、英語の大切さを痛感した。

(芦立美幸)

・仙台ホームステイ前に、東京、京都、広島で様々な日本文化を体験をしてきたようなので、気が楽だった。
・中2の息子は、自分の英語が通じてうれしかったようだ。又、英語をステイしたMeaganに教えてもらったことで刺激を受け、英語に対する意識づけになった。

(阿部智子)

・受け入れたエリサは、女性のファッションなどに興味があり、日本の文化を知ることにはあまり意欲的ではなかった。又、東京で知り合った学生と連絡をとることに忙しく、私達とコミュニケーションをあまりとろうとしなかったことは残念だった。
・自分の英語力を知る機会となった。又、日本の文化を外国の人々に伝えたいという、新しい課題ができた。
・3才の息子は、ホストファミリーすることをとても喜んでいた。

(安藤綾華)

・家族でたのしく過ごそうと受け入れた。Elonは、海苔巻作りを楽しんだり、日本語を覚えようとしていた。又、我が家の子ども達に、ABCなど英語の発音を教えてくれた。
・我が家の子ども達が、2年前にホストファミリーを引き受けた時より、自分からコミュニケーションをとっていた。成長できる場があるのは良いと感じた。

(境規江)

・これまでのホストファミリーは同年代か年下が多かったが、今回は祖母と同じ位の年齢のマーガレットさんを迎えた。マーガレットさんが積極的に話しかけてくれ、たくさん会話ができた。学校のこと、親の職業についてなど色々聞かれた。
・畳の部屋に感動していた。
・ステイ期間が短かったけれど、今まで以上に濃い密度で交流することが出来た。これからも手紙などで交流を続けていきたいと思う。アメリカにも行ってみたい。

(今野耕嗣 高2)

・初めてのホストファミリーだった。我家の子ども達と受け入れたNellyと、言葉の壁を越えて楽しい時間を過ごした。
・フェアウエルパーティのパフォーマンスは、当初忙しい中大変だと思ったが、一緒に考え作り物をすることができて、とてもよかった。
・娘が見送りの際大泣きし、数日間Nellyちゃんに会いたい、会いたいと言い、私も悲しい気持ちになった。7才の娘には初めての別れとなったが、それもまた、出会いと別れの経験となり良かった。次もまた、ホストファミリーをしたいと家族と話している。

(園田芙実子)

・Angelicaは何でもできる子だったが、のんびりしていて時間のチェックが必要だった。
・自分は英語ができないが、ホストファミリーを引き受けた。アメリカ留学の経験のある息子が、1日だけ帰郷し通訳してくれた。

(阿部眞弓)

・今回は子どもではなく75才の女性でしたので、これまでとは違った気持ちで緊張しての受け入れだった。
・彼女はベジタリアンでしたので、出したものから食べられるものを食べてもらいました。
・英語を通してのコミュニケーションは、言っていることはだいたい理解できても、自分の言いたいことを英語で表現することができませんでした。それでも何とか通じ合えるのがホームステイの楽しさだと思います。ただとても素敵なマーガレットさんと、もっとお話が出来るとよかったなと思います。

(今野馨子)

・娘の企画から始まったこのプログラムを、CCEで引き受けて頂きありたがく思っています。仙台プログラム以外はホームステイではないので、日本の家庭を知ることが出来、アメリカの学生達にとって貴重な体験になったと思う。

(橋本潤子)


折紙を楽しむ安藤ファミリー


芦立ファミリーのパフォーマンス


マーガレットさんと一緒に

ニューヨーク州立大学生から届いた手紙


   

2014年度 CCEとニューヨーク州立大学学生との国際交流事業について

“日本の芸術と文化”コーディネーター 橋本有子

 今年で2回目となったCCEとニューヨーク州立大学学生との交流事業は、昨年とほぼ同じ旅程で、南三陸町へのフィールドトリップを含め5泊6日の仙台(宮城)滞在となった。仙台へ移動したときはプログラムも後半に差し掛かかり、学生たちにも旅の疲れが溜まり始めていた。しかし、大都会から少し離れた仙台で日本の家族に迎えられ日本の家庭生活を体験できたことで、このプログラムが重きを置いている“人との交流”を一番濃く経験できる事業になったと思う。
 ホストファミリーとの生活で学生達は、常に通訳に入っていた私から離れることで言葉の壁を目の当たりにしたようだった。日常生活の中で身振り手振り(ボディーラングエッジ)がどれだけ助けになるか、しかしまた、言葉が通じないということが細かなニュアンスや複雑なことを伝えるのにどれだけ大きな壁になるかを実感したようだ。言葉が通じないもどかしさを感じることができたのは、それだけコミュニケーションが求められる環境に置かれていたからだろう。
学生の中にはアメリカ人代表として印象を残すことを重く受け止め、大変気を使い気疲れした学生もいた。また、手伝いができない(何かしたいとオファーするがただ座っていて、と言われる)環境を大変もどかしく感じ、好意を素直に受け取り感謝する、ということが難しかった学生もいた。いずれにせよ、相手のことを思いやりお互いに心地良いコミュニケーションをとる、ということがそう簡単でないことを学ぶことが出来たのではないかと思う。
又、何人かの学生はホストファミリーと一緒に料理をしたと、とても楽しそうにその時の様子を話してくれた。ホストママから新しいレシピを学びながら、また自分の知っている料理法を紹介しながら、言葉と言葉の直接的な会話でなく、料理という媒体を通してのコミュニケーションは、言語のコミュニケーションがスムーズには難しいお互いにとって、一歩近づくことのできた時間になったのだと思う。
CCE企画第一弾の折り紙ワークショップは大変良かったと思う。言葉があまり通じずとも、身振り手振りの視覚が頼りになる折り紙では、時折“あ~!”という納得の声が聞こえてきた。また、子どもから大人まで年齢問わず、学生と一緒に無理なく交流できる場になっていたと思う。

昨年はウェルカムディナーだったが、今年はウェルカムパーティーを盛大にして頂いた。学生は2名多いだけだが、ホストファミリーの子ども達やゲストも多く大変賑やかな会だった。
ケビンのムーブメントワークショップでは緊張感のあった会場の雰囲気が一気に和み、”きゃーきゃー”と声を上げる子ども達が印象的であった。動きという世界共通の非言語コミュニケーションが最大に生かされた場であったと感じた。
また、毎回美味しい手料理を用意してくださるCCEメンバーやホストファミリーの皆さんに本当に感謝したい。外食続きの私達にとって、日本の手作り料理をいただける頂ける場は大変嬉しいものだった。

 南三陸町被災地訪問では、津波資料館、津波跡を見て回った。私は津波前の町並みを知らないが、穏やかな海が形相を変えて人々や家々を飲み込んでいったことは信じがたいが事実であり、自然災害の恐ろしさと自然と共に生きる限り私たちが考えていかねばならないことがあることを知らされた。学生達も資料館で米国からの支援物資等を見たときには少なからずアメリカと南三陸町のつながりを感じ、2009年と2011年の津波後を映した航空写真を見て、テレビで見た”Tsunami”をもっと身近なものとして捉えることができたようだった。
宿泊先の「さんさん館」で籠御膳の夕飯をいただいた。もずくや海草サラダなど最初は珍しがっていたが、今年の学生の大半が一度は試してみるという心構えでいた為、食べずに嫌がる学生は少なかった。翌日は炎天下でジャガイモ堀りをして、阿部さんの台所をお借りしてフライドポテトを作った。調理をしていない学生達もキッチンで我が家に居る様にくつろいでいる姿に、阿部さんも笑っていた。出来上がった茹でたポテトとフライドポテトは大変美味しくて、次々とお箸が伸びる様子に、ケビンの“他の人の分も考えなさい!”と声が上がるほどで、大家族が食卓を囲んでいるようだった。その後、津波後初めての大きなイベントである夏祭りにも運よく参加でき、学生達も大変楽しんだようだった。地元の人に話しかけられたり警察官と仲良くなったりしながら、屋台でたこ焼きを食べたりお土産を買ったりした。阿部さんご夫婦には、昨年と同様駅までの送迎から全てお世話になり、台所まで開放していただいて大変感謝している。
 フェアウェルパーティーでは、恒例の各家族によるパフォーマンスを楽しんだ。今年は歌が多かったが、学生も知っている歌を選び英語と日本語で歌ったり、練習をする中で様々なコミュニケーションがあっただろうと思わされるパフォーマンスが多々見られた。また皆さんの手作り料理を頂き、学生達は京都で手に入れた浴衣を着て、華やかな会だったと思う。

最終日の出発の際は、バスの停留所が歩道にあったためゆっくりとお別れできなかったのが残念だった。感想文も即席の失礼なものになってしまい反省している。仙台滞在は旅の疲れから回復できる貴重な時間であったため、私の気も緩んでいたのではないかと思う。仙台滞在を入れていただき、また準備計画等をお任せできたお陰で、仙台以外のプログラム準備に専念出来、私自身バテずにプログラムを乗り切ることが出来た。

帰国の際、一行はトロント着が3時間遅れたために乗り継ぎの飛行機に乗れないなどあったが、無事家まで辿り着いたようだ。大きな病気や怪我もなく、また事件事故に巻き込まれることもなくプログラムが無事終了できたことが、コーディネーターとしては何より嬉しい。
また、ホストファミリー報告会の様子から、学生達と大きなトラブルや失礼がなかったと聞き、少しほっとした。
 “日本の芸術と文化”を2度終えてみて、今回は少し自分自身を客観視することがきたように思う。自分がどのような経験をしているのか、昨年はただただ夢中で考える余裕もなかったが、今回のプログラムの計画・実行を通して私自身が地に足が着いた“国際交流”をしていることを再確認した。計画時は、日本の何を見せたいのか何を考えてもらいたいのか、訪れる都市から日々の詳細な内容にまでこだわり、少ない予算の中で多くの経験を詰め込めるか考えた。だが実行する中で、私が好きなものや価値を置くものに対して、学生に“してほしい反応”を無意識に持っている自分に気がついた。また、日本人固有の“空気を読む力”は彼らにはないことに改めて気づき、ボランティアして下さる方々がどのような思いでして下さっているのか等、日本人相手では説明が要らないことも、一つ一つ言葉にする必要性に気づいた。学生達(アメリカ人)と日本人を繋ぐ役割がどれほど大変か、そしてしばしばその役割が自分のキャパを超えていることも痛感した。いずれも留学時代にも感じ学んでいたことではあったが、責任の大きさが違っていたからか、より深く考え学ぶことができたように思う。
 最後になりましたが、CCEの通常事業である交換ホームステイプログラムとは異なり、受け入れのみであるということ、また大きな子ども(大学生)であったということ、二つの大きな違いを抱えながらも、学生達を快く受け入れ、仙台滞在の5泊6日が最高のものとなるように全力を尽くして下さったCCE会長をはじめ、メンバーの皆様とホストファミリーの皆様に心から御礼申し上げます。

*南三陸町の阿部さんご夫妻は、17年程前から芳賀会長のご主人を通して知り合いとなり、りんご、野菜などを長年にわたり送って頂くなど、CCE国際交流事業を理解し支援して下さっています。


南三陸町阿部さん宅にてじゃがいも料理を食べながら和んだひと時


*ニューヨーク州立大学の夏季研修授業 “日本の芸術と文化”は、東京、広島、京都、宮城(仙台・南三陸町)の計4都市を24日間で周る。学生は各々の研究テーマを掘り下げながら個々の視点で日本について感じ、考えることを目的としており、個人旅行では難しい、広い意味での日本文化・芸術を日本人を通して体験できるように組み立てられている。本授業は6単位分相当であり、学生達はプログラム中の2回のプレゼンテーションに加え、帰国後にジャーナル(日記)とファイナルペーパー(最終論文)を提出し、授業態度とそれらの点数の加算悪で成績が付けられる

発行/地球の子ども通信(CCE)

お問い合わせ先

地球の子ども通信 事務局
〒981-3213
宮城県仙台市泉区南中山1-24-5
TEL:022-376-5382

南三陸町入谷童子下行政区
TEL:0226-46-6854